中秋の名月

この日記はそろそろ6年か7年か8年か、そのくらいやっているのか
皺は年々増えても 精神年齢は8か9かその位のまま



ルンペンが寝泊まりするような黴と虫と怨念まみれの場所から、
とりあえず人間は暮らせるような部屋に移ってきてから半年経った
その部屋の持ち主は仕事を辞めて
類は友を呼んだらしく毎日遊びほうけていて
好きな人にもふられて(ざまあ)
雨に降られて仕事の機材も壊れるしさんざんだって
こいついつか絶対バチ当たると思ってたから驚きはしなかった



東京に出てきてから、1人暮らしをするのは初めてだ
隣人は朝方4時に山下達郎を爆音で聴くキチガイ
私の壁ドンも虚しく 山下達郎の柔らかい声が音を増して響くだけだった



最近ずっと考えていた事があって
実家で発揮出来る力をなぜここで発揮出来ないのか?
地元にいる頃、好きな事は毎日毎日、大好きなままで
綺麗なものや素敵な事を見つけるのが大好きで
アンテナをずっと立てて暮らしていたのに
今は毎日息をして働いて寝てご飯食べて
なにより、実家にいるころより臆病になった気がしていた
両親に愛されて、少ないけれど最高な友達も出来て
私にはなんでも挑戦出来る環境があるのに
どれが本当か、自分で見極められないなんてダサすぎる


私はきっと、田舎にいる婚期を逃したおじさんと
適当にお見合い結婚して、相手んちの農作業の手伝いして
そのうち子供なんかが産まれて、幼稚園通わせて
ママ友のなんか嫌な部分が見えてきて旦那のはげたおっさんに愚痴って
適当にジャスコで服かって生えてきた白髪抜いてとか子供に言って
たまに東京に遊びに来るっていう、そういうのがお似合いなんだ
でも、本当にそうなったら村上春樹の小説ばりに私は手首を切ってそのうち死んでしまいそうだよ


これからきっと、叶う事も叶わない事もいっぱいあるんだろう
私が、叶ってほしいと思ったことが叶えばいい
叶わなかったことは、縁がなかった事だって思えればいい
両親が元気で長生きして、幸せな友達と一緒に遊んで
大好きな人と結婚して、子供が2、3人産まれて
私も好きな事に関わりながら仕事をして
旦那さんも一生懸命仕事をして
なるべくケンカのない、たのしい時間の多い暮らしが出来たらいいな
簡単なようで、今の積み重ねがあって出来る事だよね
今をおろそかにしたら、わたしきっとはげたおっさんと結婚するか
むしろ一生独身で、うちの血は私でおしまいになってしまう
仕事だってスーパーのパートやることになる
立派な仕事だけど、やりたいことと違うからね
あーこわい面倒くさい

でもみんなを愛してるから頑張りたいし、ちょっと頑張れるかもな
大好きな人にもらった線香花火があまってるから
次会えたとき一緒にやりたいな
最初ご飯食べに行ったときみたいにちゃんとニコニコして
可愛くして会うんだ
もう近くにある大切なものは死ぬまで大切にするって決めたよ私は

ボスケテ

地獄で履く可愛いサンダルが欲しい

焼けてしまった草の匂いとそこに降る雨

舌の裏側の水泡の数を数える

落ちくぼんだ目にカラコン入れてプリクラを撮る

撮りたいあの子はあなたの事なんか眼中に無いのに

夢の事引きずり回してんじゃねえよ






おばあさんごめんなさい

こんな表情をさせるために言った言葉じゃないのに

大切な人の手術に立ち会わない私を許してくださ


書籍 
履歴書


しにてえなあと思ってはいても
いざ死がこっちを見つけて近寄ってくると
はあ、とため息をついて後ずさりしてしまうもんだ
後ろを悔やんでも汚い足跡すらもう残ってないのよ
病気の肌を愛でてくれる軟膏だけがお友達
線香くらい立ててほしいけど

ネルケンの中の私は19歳だった

悲しいバイオリンは響く、
レコードのまわる音が続く、
砂の上を歩くような拍で。

睡眠薬を飲む習慣のある人は、あのときの記憶をなくしてしまっている。
どこの屋上から高円寺の街を一望したのだろう?彼のバイト先までの道順は?
とうの昔に胃液で溶けてしまったのだ。

25歳の私は、何もない2人の未来に少しだけ安堵している。彼から借りた本は母親に捨てられてしまった。根本敬

胞子

葬式の日は暖炉の前で箸を折りました。米粒を黒い絵の具で染め、新郎新婦にまいてあげました。焼けた肉の匂いがしたのでよだれを垂らしながら骨を箸で拾い上げ、骨壺にいれました。あのこの好きだった小さい飴と、13ドル、この間抜けた私の親知らずも一緒にいれてあげました。靴の波音、枯葉の上の芋虫にも喪服を着せて 花嫁のケーキの中へ閉じ込めなきゃ。木の下は根のハンモック。

濡れないようにね。傘を差して、子供を連れていく。